これ一本でお店ができる!お母さん確信のロール

姫島公園前の交差点からすぐ。母娘で切り盛りするスイーツのお店。

これ一本でお店ができる!お母さん確信のロール
大人のおやつ ANCO(あんこ)

ANCOは臼井杏里さんと母・ひさ江さんによる小さなスイーツ店。そしてANCOと言えばスティックタルトだ。丸く焼き上げたタルトを16等分にカット。手に持ってパクッといけるお手軽サイズに仕上げている。8種類あり、今の時季は「パイナップル」「アプリコットとピスタチオ」「洋梨」「甘夏みかん」「桃」「チーズケーキ」「チョコレート」「ブルーベリーとラズベリー」というラインナップである。

この8種を自由にチョイスしつつ、16個選べば元の丸い形の「アニバーサリータルト」にもできる。似顔絵やメッセージを入れたクッキーを添えることもでき、記念日にはもってこいというわけだ。お店の看板に「大人のおやつ」とうたっているように、ANCOのスイーツは甘さを抑えたリッチな味わい。甘党のみならず左党のお父さんにだって満足できるはず。

スティックタルトは素材によって150円~200円とお値段もお手軽。

さて、そんなANCOのタルト。ただ買って帰って、ぱくつけばいいというわけではない。冷凍庫でしっかりと凍らせておいて、食べる直前に常温でおよそ15分。ちょっぴり解凍してから味わう。この“半凍り”スタイルこそANCOのタルトなのだ。

「でも、やわらかいのが好きでしっかり解凍されるお客さんもいらっしゃるんです。果物のシャリシャリした食感がいいから、あまり解凍しないという方もいらっしゃいます。お好みですねアハハ」。笑いながら、ひさ江さんが悩ませてくれる。

というわけで自分のベスト解凍を求めて、一度ならず二度三度とANCOのタルトを味わった。「洋梨」や「甘夏みかん」といった果物はやはり、シャリシャリ食感からのサクサク生地がGOOD。今の季節なら5分解凍といったところか。一方でフランス・カオカ社のオーガニックチョコを使った「チョコレート」や北海道・よつ葉乳業のクリームチーズを使った「チーズケーキ」なんかは、やわらか~くいただきたい。1/4凍りぐらいか。いやでも、ひんやりいただくのも美味かも。結局、お好みですねアハハ。

これまで手掛けた「アニバーサリータルト」の写真を見ながら思案中のお客さんと杏里さん。

ANCOがオープンしたのは2015年。パティスリーで修業を重ねてきた杏里さんに、ひさ江さんが「お店をやってみたら」と言ったことがきっかけなのだそう。

「私の生まれが広島の呉でして、大長(おおちょう)レモンの産地なんです。友人にもレモン農家がいるんで、これで何か作ってみてって娘に言いましてね」と、ひさ江さん。そうしてできたのが「大長レモンロール」。大長レモンを皮ごと煮込んだコンフィチュールをたっぷりクリームに練り込んだロールケーキである。

「食べた時にこれはおいしい。このレモンロール一本でお店がやれるんじゃないかな」。そう思い立ったひさ江さん。杏里さんの名をもじった飼い猫の名前から、店名を「ANCO」に決定。猫のイラストの看板まで作ってしまった。

「そんな母の勢いにおされて、あれよあれよという間にオープンしてしまいまして…」とは杏里さん。というわけで冒頭「ANCOと言えばタルト」と述べてしまったが、「ANCOと言えば大長レモンロール」が正解だった。

だが続きがある。ひさ江さんの談。「その頃ちょうど私がグラノーラにハマっていまして。娘にクッキーを焼いてもらったらこれもおいしかったんです。グラノーラのクッキーもいけるなと思いまして」。

だからANCOの看板には「大人のおやつ」とともに「レモンロールと焼き菓子の店」とある。というわけで「ANCOと言えば大長レモンロール、続いてグラノーラクッキー」。これが真実だ。

「大長レモンロール」は1本850円、1/5カットで180円。大長レモンは、呉市豊町大長地区とその周辺地域で栽培されており、防カビ剤を使っていないので皮まで丸ごと食べることができる。

てなことはさておき、ひさ江さんが感激した「大長レモンロール」である。作り手の杏里さん曰く「好き嫌いがはっきり分かれますね」。その言葉がまた妙に心をくすぐってくれる。

一口頬張ってみると、レモンの爽やかな酸味がこれでもかと押し寄せる。クリームの甘みはほんのり。さすがは“大人のおやつ“なだけのことはある。生地は「モチッとした食感とあっさりした味わいがほしくて」と米粉製。これがふわふわしつつも甘さ控えめで、レモンの豊かな味わいを際立たせる。

「お子さんには無理かなって母と話していたんですが、2~3歳の子が好きって言ってくれたりもするんですよ」。好きな人にはとことんハマる魅惑のロールケーキなのだ。

マダガスカル産バニラと国産きび砂糖のやさしい甘みが印象的な「きび砂糖のカラメルプリン」180円。広島産レモンの中でも特に希少な宝韶寿(ほうしょうじゅ)を使った「レモンスカッシュ」250円。

オーダーを受けてからクリームを詰める「パイシュー」200円。

グラノーラクッキーをはじめ、焼き菓子もいろいろ。

そんなレモンロールと、グラノーラクッキーでスタートしたANCO。お客さんの声も聞きながら3年を経た現在、焼き菓子は10種以上、プリンは2種、パイシューにレモンスカッシュとバラエティ豊かな顔ぶれになった。一番人気はひさ江さんが「いろいろ食べられるようにもっと小さくカットして」と言って生まれたスティックタルト。着実に発展しているのである。

でも「いやいや、うちはもうお客さんに助けてもらってやってるだけですウフフ」とひさ江さんが言えば、「こぢんまりとやってるだけなんですほんとワハハ」と杏里さん。ムードはゆるいが、味わいはキリッとシャープ。そんなスイーツが居並ぶお店だ。

大人のおやつ ANCO
住所/西淀川区姫島5-10−30
電話/070-5044-8964
営業/11:00~19:00
定休/月・火・日曜(イベント出店のため臨時休業あり)