キャンバスは畳!なアートを創る。
黒田畳産業・黒田主税さん

佃にある古き良き風情の畳屋さん。お店の前を通ると何やら作業所いっぱいに畳に絵が描かれている。畳屋さんであり畳アートを創作されている黒田畳産業の黒田主税(ちから)さんは、西淀川のアートイベント「みてアート」でもおなじみで、「となりの人間国宝さん!」でも紹介された名物職人さんです。

* * *

―― 私も十数年前から黒田畳屋さんは存じていましたが、その頃はまだこのような作品はなかったような気がします。

「13年前までは趣味で画用紙に描いていましたが、孫から『おじいちゃん絵が下手やなぁ』って笑われ、そこでちょっと奮起して人と違うところを見せたくて、畳の切れはしに絵を描くことを思いつきました(笑)。ところが畳は抗菌作用が強く汚れが付着しない『い草』でできているので、あらゆる具材を用いても弾いて染まらないんです。純国産のい草農家から仕入れているので尚更です」

―― へぇ、畳の素材って利にかなっていたんですね。

「先人の知恵は素晴らしいです。しかも、い草の生産はそりゃ過酷で、12月から1月の真冬にかけて氷を手で割って苗の植付けをします。また真夏の日照りが続く暑い頃に刈取りをします。畳とは、い草農家の体を張った作品なのです。そんな畳の切れはしを仕事とはいえ加工段階で長年捨ててきました。孫の一言が資源の大切さを気付かせてくれました。私は何としてもこの畳の切れはしを再利用し、アートとして生き返らしたいと1年掛かりで試行錯誤の末、具材を染めることに成功しました」

―― 畳に描くことがそんなに大変だったとは知りませんでした。どうやって染めるのですか。

「そこは話が長くなるので企業秘密をしておきます。直接聞いてくれたら教えますけどね(笑)」

夏の高校野球予選で地元淀商渡辺選手が
逆転サヨナラ打で掲載された新聞記事をそのまま模写。

―― しかし風景だったり人だったり色んな作風がありますね。

「子供の頃古民家で育ったのか、かやぶき屋根を書くのが大好きでよく三田や篠山あたりで風景を撮りに行っていましたが、最近は全国を旅しています。昨年も東北の釜石で、台風による山崩れで流れた流木の撤去作業にボランティアで参加しました。そこで東日本大震災で多くの人の命を救った宝来館の女将に出会い、感謝の気持ちで肖像画を描いて寄贈すると大変喜ばれました。今後も畳アートを通じて人との交流を大切にしていきたいと思っています」

黒田さんの作品にはどこか懐かしさと人の暖かさが伝わってきます。
ちなみに最近は絵が上手くなり、孫から冷やかされなくなったそうです。


黒田畳産業
西淀川区佃3丁目11–12
電話06-6473-3255


※この記事は「マルモット新聞79号」を再編集したものです。文・写真=多田 修(株式会社マルモット


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