株式会社オータム

 出来島駅からライフ(スーパー)を過ぎて、団地を抜けたあたりの会社の倉庫。すぐ先は淀中学で、学校帰りの生徒たちがちらりと目をやる。軒先でいろんな物が売られているのだ。水、缶ジュース、マスク、スナック菓子にぬいぐるみ、ハンガーラックにはずらっと服がかかっている。どれもが数百円の値札。お菓子が4袋で100円、ジュース1ケース300円、ジャケット500円などなど。なにがどうなってそうなっているのか。

 こちら「株式会社オータム」の事業の柱は物流業。倉庫にはさまざまな会社からの依頼で、商品が保管されている。商品はやがて販売先などへ配送することになるのだが、なかには売れ残ってしまうものもある。

 「そうした商品をうちが安く引き取って販売しているんです」と言うのは、代表の宮島彰彦さん。

 「ほかにも個人の方がネットショップで販売している商品を預かって、発送代行をしたり、フィンランドのダイビング用機器の修理をしていたり、いろんなことをしています」。

 なんだかおもしろそうな会社だ。

軒先のお店。掘り出し物づくし。




何かしたいからと、4年で会社を辞める

 伊丹出身の宮島さん。母一人子一人の環境で育ったこともあり、「中学を卒業したら働こうと思っていた」そう。が、親族からの「高校だけは出ておけ」の言葉で工業高校へ進学。卒業後、大手コピー機メーカーに就職する。

 「すごくいい会社でした。給料はほかの会社に就職した同級生の倍近くあったし、休みもはるかに多かった。仕事はコピー機のメンテナンス。担当エリアがあって、ポケベルで呼び出されたらお客さんのところに行って修理するっていう。先輩にもお客さんにも恵まれてて楽しかったんですよ」。

 なのに宮島さん、4年で退社する。

 「就職した時から4年がんばろうって決めてたんです。4年したら自分で何か始めたいと思っていました。入った会社があまりにもよかったんで、いざとなると心が揺れました。結婚もして、子どももいましたし。でも初志貫徹で辞めさせてもらいました」。

 とは言え、何をするかは決めておらず有給休暇も消化して、いよいよ収入がなくなるまでになる。さてどうしよう。そんな時にふと目にした求人広告に、“軽貨物運送で独立開業しませんか”。つまりは業務委託として荷物を運ぶ仕事の募集だ。

 「よし、これにしようって思ってクルマを用意して求人にあった会社に登録したんですよ。それで頼まれた配達先が新大阪エリア。これがコピー機メーカー時代の担当エリアだったんでスムーズに配達できた。そしたら要領がいいと思われて(笑)。追加で航空貨物の集荷の仕事もするようになりました」。


たまたま聞いたグチから仕事を得る

 集荷の仕事は一人では賄いきれないほど数があった。そこで高校時代の友人たちに声をかけ、チームとしてやるようになった。こうして「オータム」が誕生する。

 「ただ、貨物航空会社の代行として荷物を集荷しているので、お客さんからはその貨物航空会社の人として見られるし、実際そう呼ばれる。自分の会社という実感がなかった」。

 そんなある日。宮島さんが仲間と食堂で昼食をとっていると、となりで背広姿の一団がグチっていた。

 「話が耳に入ってきました。どうも印刷会社の営業の人たちのようで、とにかく連日、遅くまで仕事があるので、外でお酒を飲んだりもできないと。そんな話なんですね。なんでそんなに忙しいかというと、当時は印刷するのにフィルムがいるから、遅い時間に製版屋さんにフィルムを取りに行って、それを工場へ持っていく必要がある。そこまでが営業の仕事になっているというわけです。それで、誰か外注なりなんなりで、代わりに行ってくれへんもんかなぁと言い合っていたんです」。

 宮島さんは、隣のテーブルの一団に声をかけた。

 「僕ら軽貨物の配送の仕事してるんやけど、夜ならあいてるんで、走れますよって言ったんです。そしたら、なんぼで行ってくれる? これぐらいで行ってくれるかって。その金額が結構よかった(笑)」。

 これがきっかけで、「オータム」は印刷会社の配送業務を受けるようになる。それが90年代半ばのこと。やがて印刷物の配送が事業の柱となり、西淀川区大和田の倉庫を拠点とする現在へと発展した。

 倉庫があり、配送することができ、大手の運送会社と提携して遠くにも運ぶことができる。印刷物の配送によって築いた「オータム」の強みは、他業種や個人の発送代行など、さまざまなビジネスにつながっている。

 「コロナ禍で印刷物が大幅に減ってしまいました。一方でパッケージなどの特殊印刷はむしろ増えてきましたし、ECサイトの発送代行は大きく伸びています。倉庫の軒先で始めたお店も、ご近所さんがちょくちょく来てくれるようになりました。特に地域のみなさんと接する機会ができたのはすごくよかったです」。

 「オータム」の前を通ったら、ぜひちらりとのぞいてみてほしい。


会社のなかにフィンランドのダイブコンピューター・アウトドアウォッチメーカー「Suunto」の修理ルーム。販売代理店から商品を預かっていたことがきっかけ。ちなみに宮島さんもダイバーなのだそう。


発送代行をしているネットショップの商品が並ぶ。保管料は1ラック月5000円とリーズナブル。


これまでの歩みも人柄もユニークな宮島さん。企業のコスト削減につながる各種梱包発送も要チェック。


株式会社オータム
西淀川区大和田6-16-3
06-6475-5399
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