空気はゆるく団子はゆるくない、というのがたまらない!
わがし屋 よだもち

和菓子屋さんというと、手土産を買いに訪れるお店というイメージがあった。どっちかというと非日常的な。でも、“菓子”なんだからもっと気軽に立ち寄ってパクッといただけばいいのよね、と思わせてくれるのがここ『よだもち』。與田光一さんが一人で切り盛りするお店だ。

こぢんまりとした店内には、ちょっと古めかしい時計や棚。テーブルやイスもどこか懐かしい。団子やどら焼き、水ようかんといった和菓子が並ぶのは木製のレトロなショーケース。なんだか学校帰りに近所の駄菓子屋を訪れたような気分になる。

この空間で和菓子を味わってみたい! と、たいていの人は持ち帰りにする団子を店内でいただいた。6種類ある中から、選んだのは「宇治抹茶」。これが思わず「うまっ」と声が出る味わい。

まずビビッとくるのが団子のコシだ。芯があるというのか、アルデンテというのか。
「ぼく自身が、あんまりふにゃっとした団子が好きではないんで」と、與田さんが言う。だからといって固いわけではまったくない。にゅ~っと、心地よい歯応えがある。生地はしっかり蒸す。そしてしっかり冷ます。というのがポイントなのだそう。
続いては、ふわふわと鼻をくすぐる芳ばしい香り。「注文を受けてからサッと焼いているんです」。焼き加減は種類によって変えているとのこと。
最後に濃厚な抹茶の風味と餡の甘みがダーッとやって来て、団子をもぐっと噛むと渾然一体。団子と餡の甘みにコントラストがあって、これがまた幸福で口福。塩と砂糖の加減の妙味である。

という楽しみが、「みたらし」「こしあん」「黒ゴマきな粉」「あぶり黄味あん」「甘しょうが」とまだあと5種類ある。甘塩っぱいタレに香ばしさに団子のにゅ~、あるいは、まったりとした黄味餡に香ばしくってにゅ~などなど、どれを選んでも口福なひと時が訪れる。時期によって若干ラインナップが変わったりもするので、もう楽しみは尽きない。
「特に変わった材料を使っているわけではないんですよ。普通に手に入るものばかり。至ってシンプルなんです」。なるほど、奇をてらわずていねいに作ることが味の秘訣なのだろう。ちなみに、保存料の類いは一切使っていない。注文を受けてから焼いて、餡を絡めるので、できるだけ早く味わうべし。

左から「こしあん」160円、「宇治抹茶」170円、「甘しょうが」170円。

「黒ゴマきな粉」180円、「みたらし」150円、「あぶり黄味あん」180円。

もちろん団子だけではない。卵をたっぷり使った「卵やき」は、ふわふわの生地がたまらない。180円。

與田さんが和菓子を学んだのは、姫里の『よだ餅』。名前からも分かるように與田さんの実家、祖父の代から続くお店である。そのレシピに、自分なりのアレンジを加えたのが『よだもち』の味だ。
初めに自分のお店を開いたのは尼崎の市場内。もともと和菓子店だった店舗をそのまま借り受けた。お店づくりから自分らしさを出したいと3年後の2014年、現在の場所に移転。内装のほとんどを自らが手掛けた。古い調度品も、もちろん與田さんのお気に入りの品々。
「でも雰囲気だけのお店にはしたくないんですよね。おいしいに越したことはないですから。どちらかというと雅な和菓子というよりは、鄙びな和菓子。日常で楽しめる和菓子のお店でありたいですね」。そう和菓子への想いを語ってくれたと思ったら、「あ、でも基本的には働きたくないんですよ。せっかく働くんならっていうだけで。本当はずっと寝ときたいです」と笑う。そんな真摯な姿勢とゆるさのバランスも『よだもち』の魅力だ。

わがし屋 よだもち
住所 西淀川区千舟2-2-6
電話 06-6476-3622
営業 10:30~19:30(売切れ次第終了)
定休 火曜、隔週水曜


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