障がいのある人にもない人にも、おせっかいな地域であるために

インタビュー 長野美保さん

取材・文=小橋伸一

佃にある就労継続支援B型のハワイアン雑貨店「ポノレア」で、長野美保さんと一人息子の孔樹さん。


昨年から週に一度、西淀川区役所の1階で「にしよどマーケット」が開かれている。このイベントは区内の障がい福祉サービス事業所がハンドメイド雑貨など、オリジナル商品を販売するというもの。金曜の10時頃からお昼ごろまで、毎回2つの事業所が持ち回りで出店している。

主催する「西淀川区障がい者地域自立支援協議会」のメンバーでもある長野美保さんは、長年西淀川区の障がい児やその親の支援に関わってきた。そして、自身も障がいのある子をもつ母親である。そんな長野さんのこれまでの歩みをうかがった。


―― 長野さんはどのような活動をしてこられたのですか?

西淀川区のおもちゃ図書館、「おもちゃばこ」の運営を16年やっていました。「おもちゃ図書館」や「おもちゃライブラリー」は、障がいのある子どもたちがおもちゃで遊んだり、借りたりできる場所です。発祥は海外ですが、日本でも取り組まれるようになり、1980年代に全国連絡会もつくられました。現在は、子どもたちが障がいの有無を問わず交流出来るところも多いです。

役割は大きくふたつ。ひとつは、来館してくれた子ども達に対して、おもちゃを使った遊びや交流を通じた療育を行うこと。もうひとつは親御さんのレスパイト(一時休息)です。体の休息だけでなく、悩みや苦労を共有することで精神的なケアにもつなげています。

残念ながら「おもちゃばこ」はスタッフの不足や親の介護など、個々の事情もあって運営が難しくなり、2021年3月をもって閉館しました。

ただ、以前からメンバーだった区の自立支援協議会の活動は今も続けています。自立支援協議会とは、当事者の家族や支援者らが地域の障がい者の支援体制について議論する協議体のことです。「にしよどマーケット」は、この協議会の生活就労部会が運営しています。


―― 障がい者福祉に関わるようになったきっかけは何ですか?

一人息子の孔樹(よしき)に発達障がいがあることがきっかけです。いま24歳で、「にしよどマーケット」にも出店している就労継続支援B型事業所「わかば」(御幣島)と「ポノレア」(佃)で働いています。

息子は3歳のときに自閉症の兆候が出始めたんですが、そのとき通っていたこども園で、友人が障がい児の親の会を始め、そこで療育や支援についての知識を得るようになりました。


「ポノレア」での孔樹さん。スマホバッグをつくっているところ。


ミシンで縫い合わせているところ。とってもきれい。


―― 息子さんを育てる中で、どんな苦労や悩みがありましたか?

年齢的に考えて、私や夫は息子より先に亡くなってしまいます。その先、息子が生きていくためにはどうしたらいいのか。そのことをずっと考えてきました。

息子は支援学校ではなく、一般の小学校、中学校に通ったんですが、それも「息子が生きていくため」を考えてなんです。地域の人たちに顔を知ってもらいたい。有名人にしたい。そうすれば、もし何かあって道で倒れていても、気づいてもらえる。学校選びもそうした理由からでした。

実際、多くの友達ができたようです。いまでも思い出す印象的な光景があるんですよ。あるとき、いつものように自転車で学校まで息子を迎えに行って、乗せて帰ろうとしたら、ふざけて学校の塀に登って遊んでるやんちゃな子たちが、「よっち(孔樹さんの学校でのあだ名)、バイバイ!」って手を振ってくれるんです。すごくうれしかった。息子に「手振ってくれてるで」と手を振り返す事を促した事を覚えています。

それから成人式はたくさんの方にサポートしていただいて、本当にありがたかったです。区役所に勤める知人にも協力してもらって、ヘルパーさんも含めて3人分の席をとってもらって参加しました。大きくなった同級生たちが駆け寄ってきてくれて、一緒に写真を撮りました。「共に学び、共に育つ」場としての学校の大切さを実感しました。


―― 息子さんのような出会いの輪がもっと広がるといいですよね。

日常、障がいをもった人と出会う機会はなかなかありません。なので、「にしよどマーケット」の意義は大きいんです。多くの人が「にしよどマーケット」という場で、区内の障がい福祉サービス事業所で働いている人たちと出会ってほしいと思いますし、彼ら、彼女らが手がけた商品にも注目してほしいと思います。とても質の高いものがそろっていますから。

そうして地域の人たちが、もっともっと障がいをもった人におせっかい的に関わっていくようになるといいなぁ。西淀川区って、そんなことが得意な人が多いように思うんですよね。 


孔樹さん作のスマホバッグは「ポノレア」で販売中。


「ポノレア」のみなさんと。


長野さんは月に1回、御幣島でケーキとドリンクが楽しめる「カフェねおほ」を開いているので、みなさんぜひ。



カフェねおほ
西淀川区御幣島2-13-34 西淀川子どもセンター
1~11月の最終火曜13時~16時

ハワイアン雑貨 Ponole’a(ポノレア)
西淀川区佃2-5-24
https://www.ponolea-shop.com/